吉岡研究室

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Biofunctional Imaging
吉岡研究室
大阪大学 先導的学際研究機構(OTRI) 生体機能イメージング
      大阪大学大学院 生命機能研究科 MRI協働ユニット
大阪大学・NICT 脳情報通信融合研究センター(CiNet) 計測基盤技術

WORKS / 研究内容

イメージング技術を進化させ 今まで見えなかったダイナミックな生命現象を非侵襲的に捉え より詳細で本来の“なま”の生命現象の理解を目指しています

目標

私たちの研究室では、小動物用11,7TMRI装置やヒト用7TMRI装置を用いて、免疫機能・脳機能を中心に「ダイナミックな生体機能を非侵襲的にイメージング」することに挑戦しています。時空間分解能の向上とともに、特徴的な機能抽出のための手法開発や、イメージングにより、機能異常に至る機序を明らかにすることにも挑戦しています。とりわけ中枢神経系に興味を持っていますが、中枢神経系はそれのみで存在しているわけでは無く、免疫系・内分泌系・消化器系を始めとして体全体とも相互作用していますし、環境の影響も受けます。わたし達は、それらの(こころ・免疫・ホルモン・環境など)の相互作用を非侵襲的な磁気共鳴法(MRI)で評価したいとも考えています。「病は気から」も科学的に評価できるレベルに来ていると考えています。

磁気共鳴イメージングと磁気共鳴スペクトロスコピー

磁気共鳴法(NMR)は、他の非侵襲的画像化法では難しい、機能・構造・代謝の情報を合わせて提供できる特徴を持っており、生体機能の評価において重要な役割を果たします。磁気共鳴法がこのような特徴を持つのは、磁気共鳴信号が様々な生体機能を反映した因子により変化するからです。この特質を活用することで、生体内の多様な情報を統合的に引き出せる可能性を持っています。生理学的にも病態生理学的にも重要と思われるヒトの脳内の温度も検出できるようになり、脳の温度がダイナミックに変動していることも分かるようになってきました。磁気共鳴法を活用することで、生体内で複雑に絡み合う生命現象を、非侵襲で、多面的且つ高い精度で可視化することが可能になってきています。本研究室では、主にこの磁気共鳴法を駆使し、情報取得のための手法開発や、より詳細な解析法の導入を行っています。対象としては、様々な手技が使える細胞・マウス・ラット等から、ヒトまでであり、「細胞レベルからヒト個体レベルまで」の研究を包括的に行います。また、光科学チームやプローブ合成チームと共に、新規プローブ開発や感度向上、新規計測法の開発を行っています。基礎医学・臨床医学両方面での共同研究も多数進んでいます。

高感度・精細イメージング装置

大阪大学吹田キャンパスには、小動物用11.7Tとヒト用7Tの超高磁場MRI装置があります。高感度化による高時空間分解能の撮像と共に、高磁場で有効なスペクトルやコントラストの活用も行っています。

縦型11.7T超高磁場MRI装置では、実験動物の詳細な情報が取得できる。

私たちは、小動物用の11.7Tとヒト用7Tの超高磁場MRI装置を主に用いた研究を行っています。超高磁場では、磁気共鳴信号の増大による高感度化で、高時空間分解能がもたらされますが、さらに高磁場でより強調される磁化率の影響を加味したコントラストが有効となります。これらにより、動物実験では、造影剤としての磁性粒子を活用する事で、詳細でよりコントラストのついた画像を取得可能となり、マウス脳やリンパ節などの生体深部において、傷つけること無く、1細胞レベルで動きを追跡できるようになりました 

リンパ系の可視化

リンパ系は外部から侵入した異物の処理などを担う、重要な免疫系器官です。マウスやラットのリンパ節は健常時には、1mm以下のものも多いのですが、超高磁場MRIを用いることで、その構造や機能を非侵襲的に且つダイナミックに評価することが可能です。

マウスのリンパ節は1mm程度までが多いが、十分に評価可能である。

マウス下腿部リンパ管の可視化。

皮下の免疫細胞の所属リンパ節への移動を同一個体で経時的に追跡できる。

マウスリンパ管やリンパ節は、微細であるが、超高磁場MRIでは、非侵襲的に評価可能である。リンパ管の描出には、現在の所、造影剤が必須であるが、リンパ節は、造影剤無しで評価可能である。関与する免疫細胞は、予め標識が必要である。リンパ流やリンパ節への癌の転移なども、造影剤を用いる事で評価可能である。

1細胞レベルでの動態解析

MRIにより観察可能な造影剤(磁性粒子など)を用いることで免疫反応に伴う細胞の動きや機能を捉えることが可能になります。上の画像は磁性粒子をマウスの足底皮下に注入したものです。皮下に注入された粒子は免疫系細胞に貪食され、所属リンパ節に運ばれます。注入2日後にMRIで撮像すると、膝窩リンパ節にMRIの信号変化が観察されます。

 マウス膝窩リンパ節のMRI。黒い部分が足底から移動してきた貪食細胞。1細胞レベルで非侵襲的に画像化し追跡できる。

マウス脳のMRI。黒い点が脳内に存在する標識したマクロファージである。1細胞レベルで識別できる。このマクロファージの動きも可視化できた。

超高磁場MRI装置により平面分解能数十μmの高い解像度を実現することが可能となり、in vitroのみならずin vivoでも1細胞レベルの動態追跡が可能になってきています。図のマウスリンパ節やマウス頭部の画像では、1細胞レベルで確認できています。マウス脳、リンパ節、リンパ管の中で、細胞が1細胞レベルで動き回る動画も作れています。より詳細な時間・空間分解能での撮像を行うため、MRIの心臓部とも呼ばれる高周波コイル(RFコイル)も工夫を重ねています。

神経系の描出(機能的・解剖学的)

機能的画像、解剖学的画像の撮像が可能です。機能面、構造面を併せた評価も評価です。3次元的なDiffusion画像を用いることで、解剖学的な神経軸索のトラッキングができ、多方面で活用できます。

ヒト脳の活動変化部位の描出

ラット脳の活動変化部位の描出

 ヒト脳神経軸索の描出

ラット脳神経軸索(脳梁付近)の描出

中枢性自己免疫疾患モデルマウスでの神経軸索変性の可視化。

私たちの用いる11.7T超高磁場MRI装置では、マウスのような小動物においても神経軸索のトラッキングを行うことが可能で、自己免疫疾患マウス、発達障害モデル動物、薬物投与動物、ノックアウトマウスなど、様々な小動物で神経系の形成・成長過程や炎症を無侵襲で評価することができます。機能的なネットワークの評価も検討しています。

炎症の描出・評価

超高磁場MRIでは、詳細な画像が得られる事から、微少血管や微少神経軸索の変性が明らかとなって来た。

マラリア感染マウスの嗅球・眼球付近の詳細MRI。

中心上側がマウス嗅球である。微少な黒い部分が微少出血である。マウスがマラリアに感染したとき、嗅球で微少出血がおこることがMRIで始めて明らかになった。嗅球が脳マラリア発症の重要部位であった。

多発性硬化症モデルマウスの脊髄動脈のMRI。同一個体のMRI。

多発性硬化症モデルマウスでは、脊髄の神経軸索がダイナミックに大きさやコントラストを変えることが明らかとなったが、さらに、100µmレベルの脊髄の栄養血管さえも、上のMRIのように長軸方向に伸び縮みしている事が明らかになった。これは、MRIで同一個体を経時的に追跡できたからこそ分かったのであり、別個体では、全く分からなかった現象である。生体では、100µmレベルの構造物の変動は、日常的に起こっていると思われる。今まで、生きたままでは、この程度の解像度で、かつ同一個体で追跡できなかったから、気がつかなかったと思われる。今後、このような事例が多く見出されると思われる。

炎症部位に集まる免疫細胞の可視化。免疫細胞は標識が必要。

炎症性細胞のダイナミックな動態を経時的に追跡可能である。ただし、炎症性細胞は、標識が必要である。標識には、臨床で用いられている造影剤を使用できる。この画像の場合も、臨床で用いられている鉄の造影剤を用いた。

多面的機能解析手法の開発

私たちは磁気共鳴スペクトロスコピー(MRS)を用いることにより、非侵襲的に深部の代謝物質の情報を得る事ができます。下図左2枚は、脳のMRSであり、神経原性の細胞に特異的に存在するNAA(Nアセチルアスパラギン酸)や神経伝達物質としても重要なGlu(グルタミン酸)やGABAも定量的に評価することができます。

ヒト脳のスペクトロスコピーと温度画像

左2枚はヒト脳内の代謝物質を検出できるスペクトロスコピー(MRS)である。右は、ヒト脳の温度画像である。スペクトロスコピーでは、脳内のグルタチオンやアスコルビン酸、高エネルギーリン酸化合物も定量可能である。磁気共鳴信号には、温度やpHに依存する情報が含まれており、それらを絶対温度やpHに換算し直すことも可能である。脳は、健常な場合には恒常性が保たれているように思われてきたが、脳の温度さえもダイナミックに揺らいでいることが分かってきた。

情動・免疫の客観的評価から制御へ

神経系、内分泌系、免疫系は直接または液性因子を介してお互いに密接に関わっていると考えられます。これらは情動にも関わるし、情動は逆方向にも影響を及ぼすと思われます。これらの関係をより客観的に評価できるようにし、更には、相互の制御にまで発展させたいと考えています。

味覚嫌悪学習での活動領域(ラットでの研究:右の画像の高信号部分がより活動していることを示している)や経路を示すことができた。

高感受性/高選択性ナノ粒子や化合物開発・検証

マルチモダルプローブ(理研・QbiC・神先生との共同研究)

マウス腎臓糸球体に取り込まれる新規プローブ(京大・化研・大野先生との共同研究)。

MRIで特異的に観測可能なナノプローブを用いて、生体内の様々な細胞や組織の情報を検出可能にし、また、NIRSやCTなどの他の画像化法とのmultimodalなプローブを開発することで、より詳細な生命情報を得ることができます。左図は神研究室で開発したMRI-NIRSデュアルプローブを用いた時の画像です。

ヒト(臨床)と動物(前臨床)を繋ぐトランスレーショナルな研究

ヒト臨床と動物研究を繋ぐMRI

MRIは、ヒトでも実験動物でも同じ撮像方法・同じ評価方法が使えます。また、実験動物では、様々な病態モデルを使用できますので、ヒト臨床に先駆けた研究が可能です。動物で得られた成果をヒトにまで応用展開するのも、評価方法が同じですから、比較的容易だと考えられます。

磁気共鳴法による分子レベルから一個体レベルまでの多様な情報

磁気共鳴では、解剖、機能、代謝情報など多面的な情報が得られますが、別な観点からは、分子レベルから、細胞、組織、臓器、一個体までの幅広い情報と見る事もできます。それらを統合的に用いることも可能であり、新しい評価手法として開発しています。